
ロックの革新であり 前衛的、先鋭的な音楽である プログレッシブ・ロック。
60年代末期、当時はポップ性のあるブリティッシュ・ビートが全盛を極めていた 。そんな中、衝撃的に表れたのがプログレッシヴ・ロックだ。
プログレの特徴は 当時としては異例の長い曲、単純なラヴ・ソングではなく 難解な歌詞、様々な楽器を使った複雑な音楽性、 高い演奏力など。また、シングル中心ではなくアルバム中心主義であり アルバム全体が暗い雰囲気に満ちているものが多い。
コンセプト・アルバムが多く、アルバム全体に物語性のあるもの が多数を占める。また、クラシックやジャズ、シンセサイザーなどを 取り入れたサウンドも画期的であった。
69年から74年までが全盛期であり、 ブームはイギリスからヨーロッパにまで普及した。 このインテリな音楽はアメリカでも成功したが アメリカから有能なプログレ・バンドは現れなかった。
また、プログレッシブ・ロックのことをシンフォニック・ロックと 呼ぶ者もおり、アート・ロックやニュー・ロックと扱う者もいた。
当初プログレッシヴ・ロックは商業的ではなかったが プログレ・バンドが異例の大ヒットを記録していき、 いつしかモンスター・ロックのように扱われるようになる。 それゆえに70年代後期のパンク・ムーブメントからは 敵視され、キッズ達はプログレから離れていった。
キング・クリムゾンがデビュー・アルバムで提示した 「混乱こそわが墓碑名」という歌詞はまさにプログレッシブ・ロックを表す 言葉だ。


ビートルズのアルバム"サージェント・ペパーズ ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド"の大ヒットによってコンセプト・ アルバムが流行し、後に出てくるプログレッシブ・ロック・バンド に多大な影響を与えた。
そして、69年のキング・クリムゾンのデビュー・アルバム "クリムゾン・キングの宮殿" がリリースされ、プログレッシブ・ロックが英国音楽シーンの メインストリームに居座ることになる。代表曲"21世紀の精神異常者"から始まる斬新なこの作品の衝撃は凄かった。
デビュー後、アルバム"夜明けの口笛吹き"など 傑作をリリースしていたピンク・フロイドは、70年にアルバム"原子心母"を 大ヒットさせる。田園にたたずむ牛が写されたこのアルバムは プログレッシブ・ロックの象徴的作品となった。
70年、エマーソン、レイク&パーマーがアルバム"エマーソン、レイク&パーマー"を ヒットさせた。アメリカのバンドではありえないヨーロッパ的サウンドはイギリス人にとっては 新鮮であった。翌71年にリリースしたアルバム"タルカス"は全英1位を記録。
71年、ジェネシスはアルバム"ナーサリー・クライム"でブレイクし、 73年には名曲を多数含んだアルバム"セリング・イングランド・バイ・ザ・パウンド" をリリースした。
72年にイエスがアルバム"こわれもの"を大ヒットさせる。 どのバンドよりも高度なテクニック、宇宙をテーマにした壮大な内容などが 話題となった。
その他にも多数のプログレッシヴ・ロックに分類されるバンドが現れた。 ムーディー・ブルース、キャメル、キャラヴァン、ジェントル・ジャイアントらだ。
様々なバンドの登場によりイギリスのトップ・チャートに精神世界や非日常的なものをテーマに
したアルバムがたくさん現れるようになった。
同じころにレッド・ツェッペリンやディープ・パープルといった
ハード・ロック勢も全盛期を迎えており、この2大ムーブメントは
世界中を圧巻した。
プログレッシブ・ロックはアルバム・ジャケットにも多大な変革をもたらした。 それまではメンバーの姿を工夫して乗せるというのが常識だったが、 プレグレ・バンドはデザイナーを使い、アルバム・ジャケットを巧みなアート・ワークで 芸術的に仕上げた。
73年にピンク・フロイドがアルバム"狂気"をリリースし、 爆発的大ヒットを記録。キング・クリムゾンもアルバム"太陽と戦慄"、 アルバム"レッド"などの傑作をリリース。エマーソン・レイク・アンド・パーマーも代表曲"スティル…ユー・ターン・ミー・オン"を収録したアルバム"恐怖の頭脳改革"をヒットさせた。 この頃がプログレッシブ・ロックの全盛期であった。
74年からプログレ人気は降下していき、 76年のパンク・ムーブメントの到来と共に プログレッシヴ・ロックはメインストリームであまり目立たなくなる。 その後もプログレの黄金期が戻ることはなかった。 だが、人気を保ったプログレ・バンドはモンスター・バンドとして その後も大ヒットを飛ばし、 エンターテイメント性溢れる巨大なツアーを続けた。ピンク・フロイドの"クレイジー・ダイアモンド"を収録したアルバム"炎〜あなたがここにいてほしい"や"アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール(パート2)"を収録したアルバム"ザ・ウォール"はブームに関係なく大ヒットを記録した。
プログレッシヴ・ロックはニュー・ウェイヴなど様々なジャンルの音楽に 多大な影響を与えた。プログレッシヴ・ロック・ブームが訪れることはもうないが、影響は濃く残っている。現在では数少ないがプログレッシヴ・ロックのスタイルを継承している 新たなバンドもおり、プログレッシヴ・メタルというジャンルも存在する。 このプログレッシヴ・メタルの代表格がトゥールだ。